Amazed

Chapter 11: 母の死に隠された真実

黒田の言葉が頭から離れなかった。

「単なる病気ではない」

その意味を理解するまで、時間がかかった。

母は病気で亡くなった。

私はずっとそう聞かされていた。

幼い私には、それ以上の説明は必要ないと思われていた。

でも違った。

何かが隠されていた。

私は父を見た。

父は私の視線だけで察した。

「黒田さんが話したのか」

私は頷いた。

「本当なの?」

父は目を閉じた。

その瞬間、分かった。

本当なのだ。

「お母さんは、何で亡くなったの?」

父は長い沈黙の後、答えた。

「任務中の事故だった」

私は動けなかった。

「任務?」

「由紀は……災害支援の活動に関わっていた」

父の声が低くなる。

「そこで事故に巻き込まれた」

「でも、私には病気だって」

父は俯いた。

「お前が小さかったから」

「違う」

私は言った。

「あなたが怖かったからでしょ」

父は否定しなかった。

その日の午後。

私は黒田のもとへ向かった。

もう逃げる理由はなかった。

黒田は私を見ると、静かに頷いた。

「知ったんだね」

「はい」

私は椅子に座った。

「全部教えてください」

黒田は古いファイルを出した。

中には母の活動記録があった。

写真。

報告書。

そして最後の日の記録。

「君のお母さんは、人を助ける仕事をしていた」

私は写真を見る。

そこには、笑顔の母がいた。

知らない人たちに囲まれて。

でも、全員が母を信頼している顔だった。

「母は……すごい人だったんですね」

黒田は微笑んだ。

「だから君を見ていると、時々彼女を思い出す」

私は写真から目を離せなかった。

「父は、母を失ったことで壊れた」

「そうだ」

「でも、私まで失った」

黒田は何も言わなかった。

その沈黙が答えだった。

帰宅すると、父は庭にいた。

昔は一緒に出ることのなかった庭。

私は隣に立った。

「お母さんのこと、全部知りたい」

父は頷いた。

「分かった」

「でも一つ約束して」

父を見る。

「もう私の人生を決めないで」

父はすぐに答えた。

「約束する」

その返事は迷いがなかった。

その時、家の中から美奈子の声がした。

「美月」

振り返ると、美奈子が古い箱を持っていた。

「これも渡さなきゃいけない」

「何?」

美奈子は箱を開けた。

中には、私が見たことのないアルバムが入っていた。

「これは、あなたのお母さんが作ったもの」

ページを開く。

そこには幼い私。

父。

母。

三人の写真。

私は言葉を失った。

なぜなら、最後のページに一枚の写真があったから。

そこには、卒業式の日付。

そして母の字。

『美月の卒業式の日、必ず三人で写真を撮る』

私は涙をこぼした。

母は未来を想像していた。

でも、その未来に母はいなかった。

父が小さく言った。

「俺は……その約束も守れなかった」

私は写真を見つめた。

その夜。

父のスマホに一通のメールが届いた。

差出人は知らない人物。

内容は短かった。

『過去を公開する準備が整いました』

父の顔が凍る。

「誰?」

私は聞いた。

父は画面を見せた。

そこに書かれていた名前。

それは。

May you like

「佐伯美月さんの家族について、真実を知る者」

だった。

Related Stories

Other posts