Amazed

Chapter 12: 崩れ始めた偽りの家族

そのメールの翌日。

家の空気は完全に変わっていた。

父は何度も電話をしていた。

でも、相手は出なかった。

美奈子は不安そうにしていた。

彩香も何かを感じ取ったのか、珍しく静かだった。

私はリビングで全員を見た。

昔なら、ここにいるだけで息苦しかった。

でも今は違う。

私はもう、黙って傷つく子供ではなかった。

「誰なの?」

私は父に聞いた。

父は答えなかった。

「お父さん」

少し強く言う。

父は目を閉じた。

「君島直人」

その名前を聞いても、私は知らなかった。

「誰?」

父はゆっくり答えた。

「昔、俺と由紀が一緒に働いていた人物だ」

美奈子の顔が変わった。

「君島……」

私は彼女を見る。

「知ってるの?」

美奈子は黙った。

その反応で十分だった。

「美奈子さん」

彼女は小さく息を吐いた。

「知っている」

「なぜ?」

美奈子は椅子に座った。

「彼は……あなたのお母さんの最後の仕事仲間だった」

私は驚いた。

「じゃあ、なぜ今まで」

美奈子は俯いた。

「あなたのお父さんが、関わらせなかったから」

父が口を開く。

「違う」

美奈子を見る。

「俺だけじゃない」

二人の間に何かがある。

私は気づいた。

「何を隠してるの?」

父は黙った。

美奈子が先に口を開いた。

「あなたのお母さんが亡くなる前、君島さんは事故について調査していた」

「事故の?」

「ええ」

「そして?」

美奈子は震える声で言った。

「事故には、誰かのミスが関係していた」

部屋が静まった。

私は父を見る。

「誰の?」

父は答えなかった。

その沈黙が怖かった。

「お父さん」

父は拳を握った。

「俺だ」

時間が止まったようだった。

「……何?」

父は苦しそうに続けた。

「事故当日、俺は由紀に連絡した」

「何のために」

「帰ってきてほしいと言うために」

父は俯いた。

「でも、その連絡が彼女を予定より遅らせた」

私は息を止めた。

「それで?」

「事故に巻き込まれた」

誰も話さなかった。

私は父を見た。

怒り。

悲しみ。

混乱。

全部が混ざった。

「あなたは……それを十年間隠していたの?」

父の目から涙が落ちた。

「言えなかった」

「なぜ?」

「お前に嫌われると思った」

私は笑ってしまった。

悲しい笑いだった。

「お父さん」

父を見る。

「あなたはずっと、私が真実を知ったら離れると思ってた」

父は黙る。

「でも違う」

私は続けた。

「私は、嘘をつかれていたことが一番苦しかった」

その瞬間。

玄関のベルが鳴った。

全員が振り返った。

父の顔から血の気が引く。

「来た……」

「誰?」

父は答えなかった。

扉が開く。

そこに立っていたのは、一人の男性だった。

年齢は父と同じくらい。

鋭い目。

手には大量の書類。

「久しぶりだな、隆司」

父は立ち上がった。

「君島……」

男性は私を見る。

そして静かに言った。

「君が美月か」

私は警戒しながら頷いた。

君島は書類を差し出した。

「これを見れば分かる」

「何が?」

彼は父を見る。

「なぜ君の父親が、十年間苦しみ続けたのか」

私は書類を受け取った。

一枚目を見た瞬間。

そこに書かれていた名前に、私は凍りついた。

母ではない。

父でもない。

私の知らない、第三者の名前。

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そして、その人物は。

今も私たちのすぐ近くにいた。

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