Amazed

Chapter 15: 私が選んだ未来

一年後。

私は再び、あの場所に立っていた。

防衛大学校の講堂。

あの日、雨の中で締め出された入口。

あの日、父に拒絶された場所。

でも今は違う。

私は招待されていた。

次の卒業生たちへ向けた特別講演のために。

控室の鏡を見る。

制服姿の自分。

一年間で、私は変わった。

でも一番変わったのは、心だった。

昔の私は、誰かに見つけてもらうことを望んでいた。

父に。

家族に。

誰かに。

でも今は違う。

自分自身が、自分を認めていた。

扉が開く。

「美月」

振り返ると父がいた。

以前なら、その声だけで胸が痛んだ。

でも今は違う。

「来てくれたんだ」

父は笑った。

「約束しただろ」

私は少し驚いた。

「何を?」

父は答えた。

「お前の大切な日に、隣にいるって」

胸の奥が温かくなった。

遅かった。

でも、遅いから意味がないわけではなかった。

父は完璧な人間ではない。

私もそうだ。

家族もそう。

でも、壊れたものを直すことはできる。

少しずつ。

会場へ向かう途中。

父が言った。

「美月」

「何?」

「卒業式の日」

父は立ち止まった。

「本当にすまなかった」

私は父を見る。

「まだ忘れてないよ」

父の顔が曇る。

私は続けた。

「でも、もうあの日だけであなたを見ることはしない」

父は静かに頷いた。

「ありがとう」

講堂に入る。

そこには、昔の私のような学生たちが座っていた。

不安。

期待。

孤独。

全部を抱えた顔。

私は壇上へ上がった。

マイクの前に立つ。

そして話し始めた。

「一年半前の私は、自分の卒業式の日に、入口の外に立っていました」

会場が静かになる。

「雨の中で、自分には価値がないと思いました」

学生たちが聞いている。

「でも、後になって分かりました」

私は続けた。

「誰かが私を見ていないことと、私に価値がないことは、全く違う」

その言葉を言った瞬間。

胸の奥で、長い間閉じていた扉が開いた気がした。

講演の後。

私は外へ出た。

空は晴れていた。

あの日とは違う空。

校門の近くには、父。

悠真。

美奈子。

彩香がいた。

彩香は少し照れながら言った。

「写真、撮らない?」

私は笑った。

「また私の招待状を取るつもり?」

彩香は慌てた。

「もうしない!」

全員が笑った。

それは、昔の家族写真とは違った。

完璧ではない。

欠けている。

でも、本物だった。

父がカメラを構える。

「美月」

「何?」

「笑って」

私は自然に笑った。

シャッター音。

その瞬間。

私は母の言葉を思い出した。

『誰かに愛されるために、自分の価値を証明し続けないで』

私はもう証明する必要はなかった。

私は私だった。

雨の卒業式で失ったもの。

父との時間。

普通の家族。

過ぎた年月。

それらは戻らない。

でも、あの日の雨が教えてくれたことがある。

誰かに扉を閉められても。

誰かに否定されても。

自分自身まで、自分を閉じ込めてはいけない。

私は前へ進む。

私の名前を、自分の声で呼びながら。

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佐伯美月。

それが、誰にも奪えない私の人生だった。

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