Chapter 11: 消された家族写真
写真を見た瞬間。
私は動けなくなった。
そこには母がいた。
若い頃の母。
そして隣には、私の実の父親だという男性。
でも、その横。
小さな女の子がいた。
私はその顔を見た。
どこかで見たことがある。
「……」
隣にいた結衣も写真を覗き込んだ。
そして、顔色が変わった。
「待って」
彼女の声が震える。
「この子……」
私は結衣を見る。
「知ってるの?」
結衣はゆっくり首を振った。
「違う……でも」
彼女は写真を指した。
「この服」
写真の少女が着ていた小さな青い服。
「私が子供の頃持っていたものと同じ」
全員が沈黙した。
父が写真を取った。
そして、長い間見つめた。
「そんな……」
私は父を見る。
「何?」
父は答えなかった。
直人が言った。
「その子は、美智子さんの娘です」
結衣の顔から血の気が引いた。
「……私?」
私は混乱した。
「どういうこと?」
直人はゆっくり説明した。
「あなたの実の父親は、亡くなる前に一つの約束をしていました」
「約束?」
「二人の子供を守ること」
私は息を止めた。
「二人?」
直人は頷く。
「あなたと結衣さんです」
部屋の空気が凍った。
結衣は後ずさる。
「嘘……」
「あなたのお母さんは、結衣さんを捨てたわけではありません」
直人が続ける。
「美智子さんが、自分の利益のために事実を隠した」
私は拳を握った。
「つまり……」
「はい」
直人は言った。
「あなたたちは、血の繋がった姉妹です」
時間が止まった。
結衣が涙を流した。
「じゃあ……」
彼女は私を見る。
「私が着ていたワンピース……」
私は目を閉じた。
母は知っていた。
この二人が出会う未来を。
だから、あのワンピースに秘密を隠した。
「なぜ?」
結衣が呟く。
「なぜ私たちに言わなかったの?」
その問いに答えたのは父だった。
「美智子が許さなかった」
全員が父を見る。
父は苦しそうに言う。
「彼女は、結衣を自分の道具にした」
結衣の目から涙が落ちる。
「私……」
彼女は震える声で言った。
「ずっと、お母さんに愛されてると思ってた」
私は何も言えなかった。
同じ家にいて。
同じように嘘に囲まれて。
私たちは互いを敵だと思っていた。
でも、本当は。
同じ人に傷つけられていた。
その夜。
結衣は美智子に電話をかけた。
「お母さん」
電話の向こうは沈黙。
「私、本当のことを知った」
しばらくして、美智子の声が聞こえた。
「誰から?」
「咲希さんから」
「……」
「違う」
結衣の声が震える。
「お母さん自身が、私に嘘をついてた」
長い沈黙。
そして美智子が言った。
「結衣」
「何?」
「あなたは何も知らない方が幸せだったのよ」
その言葉で、結衣の表情が変わった。
「私は……」
彼女は涙を拭いた。
「私の人生を返して」
電話が切れた。
その直後。
私のスマホに通知が届いた。
送信者。
美智子。
内容は一枚の写真だった。
そこには、母のワンピース。
そして、その裏地を縫っている美智子の姿。
私は息を止めた。
メッセージが続いていた。
「あなたのお母さんが隠したものは、私が最初に見つけた」
「でも、あなたは一つ勘違いしている」
「私は奪ったんじゃない」
「守ろうとしたの」
私は画面を見つめた。
美智子は、まだ何かを隠している。
そして次のメッセージ。
「あなたの母親が亡くなった本当の理由を知りたいなら、一人で来なさい」
場所が送られてきた。
May you like
そこは。
母が最後に入院していた病院だった。