Amazed

Chapter 3: 消された証拠

翌朝。

私は一睡もできなかった。

机の上には母の手紙。

隣には、あの小さなUSBメモリー。

何度も再生しようとした。

でも、指が止まった。

怖かった。

母が最後に残した真実が、私の知っている家族を完全に壊してしまう気がした。

午前九時。

父が私の部屋をノックした。

「咲希」

私は返事をしなかった。

しばらくして、父の声が聞こえた。

「話がしたい」

私はドアを開けた。

父の顔は、昨日よりずっと疲れて見えた。

「お父さん、全部話して」

父は目を伏せた。

「美智子と結婚した時……お前の母さんの遺品は全部、お前に渡すつもりだった」

「でも?」

父は苦しそうに言った。

「美智子が反対した」

私は拳を握る。

「理由は?」

父は答えるまで時間がかかった。

「お金になるものがあると思ったからだ」

その瞬間、胸の奥が冷たくなった。

「母さんの思い出まで?」

父は何も言わなかった。

「それだけじゃないんでしょ」

私が言うと、父の顔が青ざめた。

「咲希……」

「母さんの手紙には、もっと何か書いてあった」

父は椅子に座った。

「お前の母さんは、美智子が会社の資金に手を出していることに気づいていた」

私は息を止めた。

「会社?」

父の家業。

母と父が二人で築いた会社。

「美智子は俺に黙って……」

父の声が震えた。

「書類を偽造していた」

その時。

突然、スマートフォンが鳴った。

父の画面を見る。

相手は美智子。

父は出なかった。

でも、すぐにメッセージが届いた。

「咲希が知る前に、USBを処分して」

私の背筋が凍った。

父も画面を見て固まった。

「……」

私は静かに聞いた。

「まだ、美智子さんを守るの?」

父は答えられなかった。

その日の午後。

私はUSBを持って近所の古いパソコン修理店へ向かった。

母が昔から信頼していた店だった。

店主の男性はUSBを見るなり、眉をひそめた。

「これは……」

「何か分かりますか?」

彼は画面を確認した。

「中に暗号化されたファイルがあります」

「開けますか?」

彼は少し黙った。

「できます。ただ……」

「ただ?」

「誰かが、意図的に隠したデータです」

私は息を呑んだ。

数分後。

画面に一つの動画ファイルが表示された。

作成日。

母が亡くなる三日前。

私は再生ボタンを押した。

画面に映った母。

痩せていた。

でも、優しい目をしていた。

「咲希へ」

その瞬間、涙が溢れた。

「もしこの動画を見ているなら、私はもうあなたの隣にはいないでしょう」

母は少し笑った。

「でも、あなたに謝らなければならないことがあります」

私は画面に近づいた。

母の次の言葉。

それは、私が一度も想像したことのない内容だった。

「咲希、あなたのお父さんは……あなたの本当のお父さんではありません」

画面が一瞬、乱れた。

私は息を止めた。

そして動画の最後。

母は涙を流しながら言った。

「あなたを守るために、私はずっと秘密を抱えていました」

その時。

店のドアが開いた。

振り返ると、そこに立っていたのは美智子だった。

彼女は私の手元の画面を見ていた。

そして、震える声で言った。

「その動画を……最後まで見てはいけない」

私は立ち上がった。

「なぜ?」

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美智子の目から、初めて本当の恐怖が見えた。

「なぜなら、その続きを見たら……あなたは私を許せなくなるから」

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