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Chapter 14: すべてを終わらせる証言

翌朝。

家には静かな緊張が漂っていた。

机の上には、地下室で見つけた書類。

USB。

母の録音。

そして、遺産移行契約。

すべてが揃っていた。

でも、私は怒りだけでは動かなかった。

母の最後の言葉が頭に残っていた。

「憎しみだけで未来を決めないで」

私は警察と弁護士に資料を渡した。

数日後。

美智子の不正について正式な調査が始まった。

彼女は最初、否定した。

「全部、咲希さんの誤解です」

でも、証拠は消せなかった。

病院の記録。

会社の送金履歴。

偽造された書類。

そして母が残した記録。

一つずつ、真実が明らかになった。

ある日。

私は美智子と向き合った。

「なぜ?」

私が聞くと、彼女は黙っていた。

「なぜ母さんのものを奪ったの?」

美智子はしばらくして答えた。

「怖かったのよ」

意外な答えだった。

「何が?」

「何も持っていない自分に戻ること」

私は黙って聞いた。

「結婚すれば幸せになれると思った」

美智子は笑った。

悲しい笑いだった。

「お金があれば、愛されると思った」

「でも違った」

彼女は俯いた。

「私は一番欲しかったものを、自分で壊した」

その言葉を聞いても、痛みは消えなかった。

母が戻ることはない。

でも、憎しみだけを抱えて生きることも、母が望んでいない気がした。

「美智子さん」

私は言った。

「私はあなたを許せない」

彼女の目が揺れる。

「でも、あなたのせいで私の人生を壊すつもりもない」

美智子は涙を流した。

その後。

結衣は私の家に来た。

「咲希さん」

「うん」

「私、引っ越すことにした」

私は驚いた。

「どこへ?」

「自分で決めた場所」

彼女は笑った。

「初めて、自分の人生を選ぶ」

私は少し笑った。

「それがいいと思う」

結衣は少し黙った。

「ねえ」

「何?」

「私たち……」

彼女は言葉を探した。

「本当に姉妹なのかな」

私は写真を見る。

母が残した写真。

「たぶん」

私は答えた。

「でも、それだけじゃないと思う」

結衣が笑った。

「そうだね」

その日。

私は母のワンピースを修理に出した。

完全に元通りにはならなかった。

でも、それでよかった。

破れた跡は残った。

傷跡みたいに。

でも、その傷があったから私は真実を知った。

数ヶ月後。

裁判の日。

父は証言台に立った。

「私は間違いました」

彼は静かに話した。

「もっと早く娘に真実を伝えるべきでした」

法廷は静まり返っていた。

「でも、私は一度も彼女を娘ではないと思ったことはありません」

私は傍聴席で聞いていた。

父の声。

母の願い。

全部が繋がっていく。

そして最後。

父は言った。

「咲希は、私が人生で最も誇りに思う娘です」

涙が出た。

裁判の帰り。

父と二人で歩いた。

しばらく無言だった。

「お父さん」

「ん?」

「私、まだ全部許せたわけじゃない」

父は頷いた。

「分かってる」

「でも」

私は続けた。

「もう一度、家族になれる努力はしたい」

父は泣いた。

「ありがとう」

その夜。

私は母のワンピースを取り出した。

もう結婚式のためだけではない。

母の思い出として。

そして、私が乗り越えた証として。

しかし、クローゼットに戻そうとした時。

ポケットの奥に、小さな紙があることに気づいた。

私は眉をひそめた。

こんなもの、前にはなかった。

紙を開く。

そこには母の字。

最後の一文。

「咲希、もしあなたがここまで来たなら……最後に一人だけ、会ってほしい人がいます」

その下に書かれた名前。

私は息を止めた。

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それは。

私が一度も聞いたことのない名前だった。

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