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Chapter 9: 裏切り者ではなかった妹

「私……?」

結衣は書類を見て震えていた。

「違う」

彼女は首を振る。

「私、こんなの知らない」

父は警察から渡された書類を確認していた。

「これは正式な告発ではない」

「じゃあ何?」

私が聞く。

父は紙を見ながら答えた。

「誰かが結衣の名前を使った」

その瞬間。

全員の視線が一つの場所へ向いた。

美智子。

彼女だった。

自分の娘の名前まで利用する人間。

私はもう驚かなかった。

「どうして……」

結衣の声が震える。

「どうして私まで?」

その質問に答えられる人はいなかった。

その夜。

私は結衣と二人で話した。

「咲希さん」

「うん」

「私、あなたに謝らなきゃいけない」

私は黙って聞いた。

「ワンピースのこと」

結衣は涙をこらえた。

「本当にごめんなさい」

「……」

「お母さんが言ったの」

結衣は続けた。

「『咲希はもう使わないから大丈夫』って」

私は目を伏せた。

「あなたは信じた」

「うん」

彼女の声が小さくなる。

「でも、あなたがあんな顔をして……」

結衣は涙を拭った。

「初めて分かった。あれはただの服じゃなかった」

私は何も言わなかった。

でも、少しだけ彼女への見方が変わっていた。

翌朝。

父の書斎で新しい証拠が見つかった。

母の手帳。

最後のページ。

そこには短い文章だけが書かれていた。

「美智子さんは、私の秘密を知った。でも、彼女が知らないことが一つある」

私はその続きを読んだ。

「本当の相続人は、咲希だけではありません」

私は固まった。

「どういう意味?」

父も知らない顔をしていた。

ページの下には、もう一つ名前があった。

「結衣」

全員が驚いた。

結衣が首を振る。

「私?」

手帳には続きがあった。

「美智子さんは、自分の娘を利用している。しかし結衣は、彼女が思うような人間ではない」

私は息を止めた。

母は結衣のことを知っていた。

そして、信じていた。

その時。

スマートフォンが鳴った。

知らない番号。

私は出る。

「もしもし」

しばらく沈黙。

そして、聞こえた声。

「咲希さん……」

美智子だった。

「お願い。結衣を連れて逃げて」

私は眉をひそめた。

「何?」

「もう遅いの」

彼女の声は震えていた。

「あなたのお父さんが知らないことがある」

私は立ち上がった。

「何を?」

電話の向こうで、美智子は泣いていた。

「あなたのお母さんを追い詰めた本当の人物は……」

一瞬、雑音が入る。

そして彼女が言った。

「私じゃない」

私は息を止めた。

「じゃあ誰?」

長い沈黙。

美智子の最後の言葉。

「あなたのお父さんが、一番隠したかった人よ」

電話が切れた。

私はゆっくり父を見る。

父の顔から、すべての血の気が消えていた。

そしてその瞬間。

玄関の外で、誰かがドアを叩いた。

「咲希さん」

知らない男の声。

「あなたのお母さんのことで、話があります」

私はドアを見る。

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母が残した秘密。

その最後の鍵を握る人物が、ついに現れた。

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