Amazed

Chapter 5: 父の罪

家に戻ると、父はリビングで待っていた。

まるで、私が帰ってくることを知っていたようだった。

「見たのか」

父の第一声だった。

私は立ち止まった。

「知ってたんだ」

父は目を閉じた。

「USBのことも」

「母さんの動画のことも」

「……ああ」

その返事が、私をさらに傷つけた。

「どうして?」

父は黙った。

「どうして私に何も言わなかったの?」

「咲希」

「私はずっと、お父さんとお母さんの子供だと思って生きてきた」

父の顔が歪んだ。

「お前は俺の娘だ」

「血が繋がってなくても?」

その言葉に、父の目から涙が落ちた。

「もちろんだ」

「じゃあ、なぜ隠したの?」

父は拳を握った。

「怖かったんだ」

私は驚いた。

父がそんな言葉を言うとは思わなかった。

「何が?」

「お前を失うことが」

沈黙。

「お前の母さんが亡くなる前、俺に言った」

父はゆっくり話し始めた。

「咲希には、普通の人生を送らせてほしいって」

私は息を止めた。

「美智子が財産のことを知れば、必ずお前を利用する」

父は俯いた。

「だから、俺は何も言わなかった」

「でも美智子さんは知った」

「ああ」

「そして母さんのワンピースを探した」

父は頷いた。

「そうだ」

私は唇を噛んだ。

「お父さん」

「……」

「母さんは、美智子さんが何をしたって言ってたの?」

父の顔色が変わった。

「それは……」

「教えて」

長い沈黙。

そして父は言った。

「美智子は、母さんの病気に関する書類を隠した」

私は固まった。

「何?」

「治療の選択肢があった」

父の声が震えた。

「でも、美智子は保険金と財産の話を優先した」

時間が止まった。

「そんな……」

私は首を振った。

「母さんは、それを知ってたの?」

父は頷いた。

「最後の日まで」

涙が止まらなかった。

母は知っていた。

自分を傷つけた人間が、家族の中にいたことを。

それでも私には笑っていた。

「なぜ……」

私は呟いた。

「なぜ母さんは、美智子さんを責めなかったの?」

父は答えた。

「お前がいたからだ」

「……」

「母さんは最後まで、お前の前で家族を壊したくなかった」

私は胸を押さえた。

その時。

玄関の方から音がした。

誰かが入ってきた。

振り返ると、結衣だった。

「聞いてしまった」

彼女の顔は青ざめていた。

「お母さんが……そんなことを?」

美智子の娘。

ずっと彼女の味方だと思っていた。

でも今、結衣の目には混乱しかなかった。

「結衣」

父が声をかける。

彼女は首を振った。

「私……知らなかった」

私は彼女を見る。

「本当に?」

結衣の目に涙が溜まる。

「咲希さん、信じて」

その瞬間。

私は気づいた。

彼女は昨日、母のワンピースを着ていた。

でも、彼女自身も何かを知らされていなかった可能性がある。

結衣は震える手でバッグから一枚の紙を出した。

「これ……昨日、お母さんの部屋で見つけた」

私は受け取った。

そこには、古い病院名。

そして日付。

母が亡くなる三日前。

「何これ?」

結衣が小さく言った。

「お母さんが……咲希さんのお母さんに会いに行った記録」

私は紙を握りしめた。

父の顔が変わる。

「そんなはずは……」

「どういうこと?」

私は父を見る。

父は何かを思い出したようだった。

「その日……」

彼の声が震える。

「母さんは、一人で病院に行ったと言っていた」

私は紙を見る。

そこにはもう一つの名前があった。

面会者。

「美智子」

私は呟いた。

そして裏面を見る。

そこには、母の字ではない文字で一文が書かれていた。

「あなたの娘について、すべて話します」

私は息を止めた。

母が亡くなる三日前。

美智子は母に会っていた。

そして、母が最後に残した秘密を知っていた。

でも、まだ一つ分からなかった。

なぜ美智子は、その秘密を知った後も、私の前で母のワンピースを着せようとしたのか。

その答えは、父の書斎に隠されていた。

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そして翌朝。

私はそこで、母が本当に守ろうとしていたものを見つけることになる。

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