Chapter 12: 最後の証拠
裁判の日が近づくにつれて。
私は不思議なほど落ち着いていた。
以前の私は。
健太に嫌われることを恐れていた。
義母に認めてもらえないことを悩んでいた。
でも今は違う。
私が守りたいものは一つだけ。
お腹の中の命。
そして。
自分自身。
裁判前日。
私は母の仏壇の前に座っていた。
母は私が高校生の時に亡くなった。
いつも言っていた。
「優花、人を見る時は言葉じゃなく行動を見なさい」
その意味を。
私は今になって理解した。
健太は優しい言葉をたくさんくれた。
でも。
行動は違った。
翌日。
法廷。
健太側の弁護士は、予想通り私を攻撃した。
「妊娠中の精神的不安定さ」
「夫婦関係の悪化」
「父親としての権利」
全て。
私を悪者にするための言葉だった。
でも。
田中弁護士は冷静だった。
「では、証拠を提示します」
スクリーンに映し出された。
メール。
契約書。
過去の記録。
法廷がざわつく。
健太の顔が青ざめる。
悦子は黙り込んだ。
「これは何ですか?」
裁判官の質問。
健太側の弁護士は答えられない。
田中弁護士が続ける。
「被告は、妻の財産を目的として婚姻した可能性があります」
「さらに、胎児の親権に関する主張も、母親を追い詰めるための手段として利用された疑いがあります」
私は静かに座っていた。
隣には父。
後ろには。
美咲と奈緒さん。
以前なら考えられない光景だった。
裁判の途中。
健太が突然立ち上がった。
「違います!」
全員が見る。
「俺は優花を愛していました!」
私は彼を見る。
初めて。
彼の目に本当の恐怖が見えた。
失う恐怖。
でも。
それは私を失う恐怖ではなかった。
全てを失う恐怖だった。
「愛していたなら」
私は静かに言った。
「なぜ守らなかったの?」
健太は黙った。
「なぜ嘘をついたの?」
「なぜ私の子を利用したの?」
彼は答えられなかった。
その時。
傍聴席から声がした。
「私が話します」
全員が振り返る。
立ち上がったのは。
悦子だった。
彼女は震えていた。
「母さん?」
健太が驚く。
悦子は前へ出た。
「もう終わりにしたい」
「何を言ってるんだ」
健太が焦る。
悦子は彼を見る。
「あなたは私の息子だけど」
「もう守れない」
私は息を止めた。
悦子は涙を流していた。
「全て話します」
「健太が優花さんに近づいた理由」
「私が指示しました」
法廷が静まる。
「そして」
彼女は続けた。
「健太には」
「まだ隠していることがあります」
健太の顔が変わった。
「母さん」
悦子は彼を見る。
「あなたが本当に恐れているのは」
「財産を失うことじゃないでしょう?」
沈黙。
「優花さんに」
「あなたの出生の秘密を知られること」
私は眉をひそめた。
出生の秘密。
健太?
悦子は震える声で言った。
「健太は」
「私の実の息子ではありません」
法廷中が凍りついた。
私は息を止めた。
そして。
悦子が次に言った名前を聞いた瞬間。
全ての謎が繋がった。
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「健太の本当の父親は――」
「あなたのお父さんです」