Amazed

Chapter 3: 父が知っていた真実

ベビーシャワーは、もう祝福の場ではなかった。

ピンクの風船。

可愛い飾り。

小さなプレゼント。

全部が、嘘の上に作られた舞台のように見えた。

私はスマホの画面を拡大した。

契約書の日付。

三か月前。

私が健太に妊娠を伝えた日。

その日、健太は泣いて喜んだ。

「俺たち、家族になるんだな」

そう言って私を抱きしめた。

でも同じ日に。

彼は別の契約を結んでいた。

「優花」

父が静かに言った。

「俺は前から調べていた」

私は父を見る。

「何を?」

父は苦しそうな顔をした。

「健太のことだ」

健太が顔を上げる。

「お父さん……」

父は彼を睨んだ。

「お前が優花に近づいた理由を知りたかった」

私は息を呑んだ。

「どういう意味?」

父は黙った。

そして封筒から別の紙を出した。

「健太は、結婚する前から借金を抱えていた」

悦子が震える。

「借金?」

健太は叫んだ。

「違う!もう解決してる!」

父は首を振る。

「解決していない」

部屋に沈黙が落ちた。

私は健太を見る。

「私に言わなかったの?」

彼は視線を逸らした。

それだけで十分だった。

「優花、違うんだ」

「何が違うの?」

「君を心配させたくなかった」

私は笑った。

「じゃあ、家の頭金を私に払わせたのも?」

「……」

「私の父に援助を頼んだのも?」

「……」

「全部、私を守るため?」

健太は何も言えなかった。

その時、悦子が突然立ち上がった。

「でも!」

彼女は私を指差した。

「あなたも悪いのよ」

私は驚いた。

「私?」

「健太を追い詰めたから、こんなことになったんでしょう」

その瞬間。

父が初めて怒鳴った。

「ふざけるな」

部屋が静まる。

父は普段、怒鳴る人ではなかった。

「娘はお腹に子供がいる」

低い声。

「そんな娘にケーキを投げつける人間が、家族を語るな」

悦子の顔が歪んだ。

私は父の隣に立った。

そして健太を見る。

「最後に聞く」

彼の目を見る。

「里奈さんとの関係はいつから?」

健太は黙った。

一秒。

二秒。

やがて彼は小さく言った。

「……結婚する前から」

胸の奥が痛んだ。

でも涙は出なかった。

もう泣き尽くしていたのかもしれない。

「じゃあ」

私は聞いた。

「私との結婚は何だったの?」

健太は答えない。

その沈黙が答えだった。

私はバッグを持った。

「帰ります」

健太が慌てて近づく。

「優花、待ってくれ」

「触らないで」

彼の手が止まる。

「あなたが守らなかったものを、私は自分で守る」

お腹に手を置いた。

「この子を」

玄関へ向かった時。

スマホが鳴った。

また弁護士だった。

今度は電話。

私は出る。

「もしもし」

弁護士の声が聞こえた。

「優花さん、大変申し訳ありません。先ほど確認できなかった追加資料が見つかりました」

私は立ち止まった。

「追加資料?」

「はい」

弁護士は少し間を置いた。

「健太さんが家の名義を隠した理由は、借金だけではありません」

私は眉をひそめた。

「どういうことですか?」

電話の向こうから、低い声が響いた。

「健太さんは、あなたの妊娠を知った直後に、ある人物と連絡を取っています」

私は息を止めた。

「その人物の名前は――」

弁護士が告げた名前を聞いた瞬間。

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私の足元から全てが崩れるような感覚がした。

それは、私が一番信じていた人の名前だった。

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