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Chapter 7: 父が隠していた過去

「お父さんが……知っていた?」

私は美咲の言葉を繰り返した。

カフェの窓から差し込む光が、なぜか冷たく感じた。

目の前には、私を裏切った妹。

私の人生を壊した男と関係を持っていた女性。

本来なら、怒鳴ってもよかった。

泣いてもよかった。

でも、もう涙は出なかった。

「説明して」

私は静かに言った。

美咲はしばらく黙っていた。

「私も全部を知っているわけじゃない」

「でも、健太さんのお父さんについて調べた時に分かったことがある」

私は写真を見つめる。

そこには笑顔の健太。

隣には悦子。

そして、健太が「亡くなった」と言っていた父親。

「名前は?」

美咲は答えた。

「健吾さん」

その名前を聞いた瞬間。

私の記憶の奥に何かが引っかかった。

父の書斎。

昔、一度だけ聞いたことがある名前。

「まさか……」

美咲が私を見る。

「知ってるの?」

私は首を振った。

「分からない」

でも、胸の奥が嫌な予感で締め付けられる。

私はその日の夜、実家へ戻った。

父はリビングで新聞を読んでいた。

私が入ってきた瞬間。

父の顔が変わった。

まるで、何かを覚悟していたようだった。

「優花」

私は写真をテーブルに置いた。

「説明して」

父は写真を見た。

そして長い沈黙。

「……どこでこれを?」

「美咲から」

父は目を閉じた。

その反応だけで十分だった。

「知ってたんだね」

父はゆっくり頷いた。

「知っていた」

胸が痛んだ。

「どうして?」

父は椅子に座った。

「健吾は昔、俺の会社の共同経営者だった」

私は驚いた。

「健太のお父さんが?」

「ああ」

父は遠くを見るような目をした。

「昔は親友だった」

「でも、金で人は変わる」

父の声が低くなる。

「健吾は会社の金を不正に動かした」

「俺が気づいた時には、かなりの額になっていた」

私は黙って聞いていた。

「その後、彼は姿を消した」

父は写真を見る。

「家族も置いて」

「でも……」

私は聞いた。

「健太は?」

父は苦しそうに答えた。

「健太は父親の借金を背負っていた」

「だから最初から、お前に近づいた可能性があると思った」

私は拳を握った。

「じゃあ、私が健太と結婚すると言った時」

「お父さんは全部知っていたの?」

父は目を伏せた。

「全部ではない」

「だが、危険だとは思っていた」

「それならどうして止めなかったの?」

声が強くなった。

父は黙る。

私は涙をこらえた。

「私を守りたかったんじゃないの?」

「なのに」

「私は一番近い人たちに傷つけられた」

父の肩が小さく震えた。

「すまない」

その一言が、余計につらかった。

私は窓の外を見る。

「健太のお父さんは今どこにいるの?」

父は答えなかった。

「お父さん」

「教えて」

しばらくして。

父は引き出しから古い封筒を出した。

「これを見れば分かる」

中には一枚の住所。

そして手紙。

差出人の名前。

健吾。

私は息を止めた。

「最近届いたものだ」

父が言った。

「健吾は生きている」

手紙を開く。

短い文章だった。

『息子のことで話したいことがある』

『あの家族に知られる前に、会う必要がある』

私は顔を上げた。

「あの家族?」

父は頷く。

「悦子と健太だ」

その瞬間。

スマホが鳴った。

知らない番号。

私は出る。

「もしもし」

数秒の沈黙。

そして。

低い男性の声が聞こえた。

「優花さんですね」

私は息を止めた。

「あなたのお父さんから、何か聞きましたか?」

声の主。

それは。

健太の父親だった。

「私はあなたに謝らなければならないことがあります」

私は握った手に力を入れる。

「何ですか?」

男性は静かに言った。

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「健太があなたに近づいた本当の理由を」

「私は知っています」

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