Chapter 11: 本当の黒幕
坂本先生が病院で目を覚ました。
その知らせを聞いた樋口校長は、すぐに向かった。
私と蓮くんも同行した。
病室の中で、坂本先生は以前とは別人のようだった。
強気な態度は消えていた。
ただ疲れた顔で天井を見ていた。
蓮くんを見ると、彼女は目を伏せた。
「……ごめんなさい」
その言葉に、蓮くんは黙った。
「僕を叩いたこと?」
坂本先生の目から涙が落ちた。
「全部」
しばらく沈黙が続いた。
「私は最低な教師だった」
蓮くんは何も言わなかった。
「でも、あなたを傷つけたかったわけじゃない」
「じゃあ、なぜ?」
坂本先生は震える手で毛布を握った。
「脅されていたの」
校長が聞く。
「誰に?」
彼女は答えた。
「あなたの学校の理事です」
その名前を聞いた瞬間、校長の表情が変わった。
「まさか……」
坂本先生は頷いた。
「黒川理事」
私たちは知らない名前だった。
でも、校長は知っていた。
「彼は、蓮くんのお父さんの会社とも関係があった」
坂本先生は続けた。
「最初は、ただ蓮くんの評価を下げろと言われただけでした」
「評価を?」
「特待生資格を失わせるため」
蓮くんの拳が握られた。
「だから盗難事件を……」
「違います」
坂本先生は首を振った。
「盗難事件は黒川理事が仕組んだ」
「何?」
「私は利用された」
彼女は泣きながら話した。
「理事は、蓮くんのお父さんが残した証拠を探していました」
「それがUSB?」
「そうです」
校長が尋ねる。
「なぜあなたに?」
「私が担任だったから」
坂本先生は目を閉じた。
「蓮くんの近くにいて、情報を集めろと言われました」
蓮くんは悲しそうに聞いた。
「じゃあ、先生は最初から……」
坂本先生は首を横に振った。
「最初は断りました」
「でも?」
「私の家族を脅された」
その瞬間、部屋の空気が重くなった。
坂本先生は続けた。
「それでも、最後の最後で私は怖くなった」
「何が?」
「あなたを本当に壊してしまうことが」
蓮くんは黙った。
「だからカメラを切った後……」
坂本先生は私を見る。
「あなたがスイッチを戻した時、正直助かったと思った」
私は驚いた。
「助かった?」
「もう止めたかった。でも、私一人では逆らえなかった」
校長は深く息を吐いた。
「黒川理事は、今どこに?」
坂本先生の顔色が変わった。
「学校にいます」
「え?」
「彼は今夜、最後の証拠を消すつもりです」
校長が立ち上がった。
「最後の証拠?」
坂本先生は頷いた。
「蓮くんのお父さんが残した、本物のデータ」
「どこにある?」
坂本先生は小さな声で言った。
「学校の地下保管室」
その瞬間。
病室の外から大きな音がした。
誰かが走っている。
警備員がドアを開ける。
「校長先生!」
「どうした?」
「学校のサーバールームが侵入されました」
全員が凍った。
「被害は?」
警備員は震える声で答えた。
「バックアップデータが消されています」
校長が顔を上げた。
「地下保管室へ急げ」
私たちは病院を飛び出した。
でも、学校に着いた時。
すでに誰かが地下へ入った後だった。
暗い廊下の先。
保管室の扉が開いている。
そして床には、一枚の紙が落ちていた。
そこにはこう書かれていた。
『蓮の父親は、真実を残した』
『だが、それを守る人間を間違えた』
その下に。
黒川理事の名前があった。
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そして、もう一つ。
蓮くんのお母さんの名前も。