Chapter 12: 地下保管室の真実
地下保管室の空気は冷たかった。
古い書類棚。
使われなくなった機械。
そして、床に散らばった資料。
誰かが急いで探した跡だった。
蓮くんは入口で立ち止まっていた。
「ここに……父さんの秘密がある」
校長は頷いた。
「そうだ」
警察も到着し、周囲の確認を始めた。
私は蓮くんの隣に立った。
「怖い?」
彼は少し考えてから答えた。
「うん」
そして続けた。
「でも、もう逃げたくない」
その言葉は、以前の蓮くんとは違っていた。
自分を責める少年ではなく。
真実を見る覚悟を決めた人の声だった。
その時、警察官が棚の奥から小さな箱を見つけた。
「これは?」
箱には蓮くんの父親の名前が書かれていた。
校長が慎重に開ける。
中には古いノート。
写真。
そして、小さな録音機。
蓮くんのお母さんが息を飲んだ。
「それ……」
「知っていますか?」
彼女は頷いた。
「主人が使っていたものです」
校長が録音機を確認する。
まだ再生できた。
ボタンを押す。
しばらく雑音。
そして。
蓮くんの父親の声が流れた。
『もしこれを聞いているなら、私の予想は当たった』
蓮くんの目に涙が浮かぶ。
『蓮を守るために、私は多くの人を疑わなければならなかった』
録音は続く。
『しかし、一人だけ疑ってはいけない人がいる』
蓮くんのお母さんが顔を上げた。
『それは、蓮の母親だ』
全員が固まった。
でも、次の言葉で空気が変わった。
『彼女は私が最も信頼する人間だ』
蓮くんが息を止めた。
『だからこそ、敵は彼女を利用しようとする』
校長が小さく呟いた。
「そういうことだったのか……」
録音は続いた。
『もし私の死後、誰かが彼女を疑うよう仕向けたなら、それは敵の計画だ』
蓮くんのお母さんは涙を流した。
「あなた……」
蓮くんは母親を見た。
長い間、彼の中にあった疑いが少しずつ消えていく。
しかし。
録音の最後に、父親は重大なことを残していた。
『本当の裏切り者は、学校でも家族でもない』
全員が耳を澄ませる。
『私の最も近くにいた人物だ』
音声が途切れる。
数秒後。
最後の一言。
『彼の名前は――』
そこで録音が壊れた。
「誰?」
蓮くんが叫ぶ。
しかし答えはなかった。
その瞬間。
地下保管室の電気が消えた。
まただ。
暗闇。
誰かがいる。
警察官がライトを向ける。
「動くな!」
廊下の奥に、人影が見えた。
走り出す足音。
私たちは追いかけた。
階段を上がる。
校舎の廊下。
そして、体育館へ。
そこには一人の男が立っていた。
黒川理事。
彼は逃げなかった。
ただ笑っていた。
「やっとここまで来たか」
校長が怒鳴る。
「黒川さん!」
黒川理事は蓮くんを見る。
「君の父親は、本当に面倒な人間だった」
蓮くんは拳を握った。
「僕の父さんに何をしたんですか」
黒川理事は静かに笑った。
「知りたいか?」
彼は一歩近づいた。
「なら教えてやろう」
そして、衝撃の言葉を口にした。
「君の父親を死なせたのは――」
黒川理事は、ゆっくり続けた。
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「私じゃない」
「君自身の母親だ」