Chapter 2: 校長が見た真実
教室のドアが開いた瞬間、空気が変わった。
「坂本先生!」
樋口校長の怒鳴り声が響いた。
その後ろには学校警備員と、数人の職員が立っていた。
坂本先生の手が止まった。
木製の定規は、まだ空中にあった。
蓮くんは黒板の前で震えていた。
涙で濡れた頬を手で隠しながら、ドアの方を見ていた。
「校長先生……」
彼の声は小さかった。
「もう……叩かせないでください」
その一言で、樋口校長の顔がさらに険しくなった。
「坂本先生。その定規を置いてください」
「校長先生、これは教育です」
坂本先生は落ち着きを取り戻そうとしていた。
「この子は盗みをした可能性があります。私はただ、反省させようと……」
「防犯カメラを切った理由は?」
校長の言葉で、坂本先生の表情が固まった。
教室の全員が息を飲んだ。
「え?」
「なぜ、カメラの電源を切ったのですか」
坂本先生は黙った。
数秒の沈黙。
そして彼女は小さく笑った。
「偶然です」
「偶然?」
「機械の調子が悪かっただけでしょう」
私はその言葉を聞いて、指先が震えた。
嘘だった。
全員が見ていた。
先生が自分でスイッチを切ったことを。
でも、誰も言えなかった。
その時、校長が私の方を見た。
「君」
私はびくっとした。
「前の席の君。何か見たことはありますか?」
教室中の視線が私に集まった。
怖かった。
坂本先生も私を見ていた。
その目は、無言で警告していた。
「余計なことを言うな」
そう言われている気がした。
でも、私は蓮くんを見た。
彼は俯いていた。
誰にも信じてもらえないと思っている顔だった。
私はゆっくり立ち上がった。
「……はい」
声が震えた。
「見ました」
坂本先生の顔が変わった。
「何を?」
校長が聞いた。
私は深呼吸した。
「先生が……カメラのスイッチを切りました」
教室がざわめいた。
坂本先生がすぐに口を挟んだ。
「嘘です!」
その声は今までで一番大きかった。
「この子は蓮くんと仲がいいから、かばっているだけです!」
私は拳を握った。
確かに私は蓮くんと話したことがある。
でも、友達だから嘘をついているわけじゃない。
「違います」
私は言った。
「私は見たことを言っています」
校長は警備員に目を向けた。
「録画を確認してください」
警備員がすぐに動いた。
数分後。
教室の後ろにあるモニターへ映像が表示された。
そこには、坂本先生が映っていた。
カメラを切る姿。
蓮くんを前へ呼ぶ姿。
そして、定規を持つ姿。
誰も声を出さなかった。
坂本先生だけが青ざめていた。
「これは……」
彼女は言葉を探した。
「編集されています」
校長は冷たい目で見た。
「あなたはまだ嘘をつくのですか」
蓮くんはその場で泣き崩れた。
「僕……」
彼は震える声で言った。
「僕、本当に盗ってません」
校長は彼の前にしゃがんだ。
「蓮くん。信じるのが遅くなってしまって申し訳ない」
その言葉を聞いた瞬間、蓮くんの涙が止まらなくなった。
でも、その時。
警備員の一人が教室の外から走って戻ってきた。
「校長先生……」
彼の顔は青ざめていた。
「盗まれたと言われていた物が……見つかりました」
全員が振り向いた。
「どこに?」
校長が聞いた。
警備員は震える声で答えた。
「坂本先生の……机の引き出しの中です」
教室の空気が凍った。
そして、引き出しの中から出てきたものを見た瞬間。
私は、自分がまだ知らない大きな秘密が隠されていることに気づいた。
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そこに入っていたのは、ただの紛失物ではなかった。
蓮くんを追い詰めた本当の理由を示す、一枚の紙だった。