Amazed

Chapter 6: 裏切り者の手紙

坂本先生に金を渡していた人物。

その名前を聞いた瞬間、蓮くんは椅子から立ち上がった。

「嘘です」

声が震えていた。

「そんなの……嘘です」

校長は何も言わなかった。

ただ、机の上に資料を置いた。

銀行記録。

日付。

金額。

そして送金者の名前。

すべて本物だった。

蓮くんは紙を見つめたまま動かなかった。

「僕を……追い出すために?」

誰も答えられなかった。

私は初めて見た。

いつも我慢していた蓮くんが、本当に傷ついている顔を。

「僕はただ……」

彼の声が震えた。

「普通に学校に通いたかっただけなのに」

その言葉が、部屋の中に落ちた。

蓮くんのお母さんが彼を抱きしめた。

「ごめんね」

「お母さんのせいじゃない」

「でも、もっと早く話すべきだった」

その時、校長の携帯電話が鳴った。

警備員からだった。

校長は通話を終えると、険しい顔をした。

「坂本先生がいなくなりました」

「え?」

「自宅にも学校にもいません」

私は背筋が寒くなった。

証拠が見つかった直後に消える。

偶然とは思えなかった。

その日の夕方。

私は帰宅途中、公園の前で足を止めた。

誰かが私を待っていた。

「君」

振り向くと、そこに坂本先生がいた。

驚いた。

「先生……」

彼女は以前のような強い態度ではなかった。

疲れ切った顔をしていた。

「蓮くんを守った子ね」

私は一歩下がった。

「何ですか」

坂本先生は小さな封筒を差し出した。

「これを校長に渡して」

「何ですか?」

「真実よ」

私は受け取れなかった。

「先生は……蓮くんを傷つけました」

坂本先生は目を伏せた。

「分かっている」

「だったら、どうして?」

長い沈黙。

そして彼女は言った。

「私にも守らなければならないものがあった」

「だから蓮くんを?」

彼女は何も答えなかった。

ただ、苦しそうに言った。

「でも、あの子を本当に追い出したかったわけじゃない」

私は怒りを感じた。

「意味が分かりません」

坂本先生は涙を浮かべた。

「私が命令されていたのは、蓮くんを傷つけることじゃない」

「じゃあ何を?」

彼女は封筒を指差した。

「中を見れば分かる」

私は封筒を開いた。

中には一枚の手紙が入っていた。

震える字で書かれた文章。

最初の一行を読んだ瞬間、息が止まった。

『蓮を守るために、私はすべてを壊すことにした』

差出人の名前。

May you like

それは――。

亡くなったはずの蓮くんの父親だった。

Related Stories

Other posts