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Chapter 4: 引き出しの中の告白

坂本先生の机の引き出しから見つかった一枚の紙は、教室全体の空気を変えた。

それは単なるメモではなかった。

白い封筒に入れられた、学校の正式な書類だった。

樋口校長は警備員から封筒を受け取ると、慎重に中身を確認した。

私はその場から目を離せなかった。

蓮くんも、泣き腫らした目でその紙を見ていた。

「これは……」

校長の表情が曇った。

坂本先生は突然、声を荒げた。

「それは私の個人的な書類です!」

「個人的な書類?」

校長はゆっくり顔を上げた。

「なぜ、あなたの机の引き出しに、蓮くんの名前が書かれた書類が入っているのですか?」

教室がざわついた。

坂本先生は黙った。

さっきまであれほど強気だった人が、初めて言葉を失っていた。

私は隣の席の友達を見る。

誰も理解できていなかった。

なぜ先生が蓮くんを疑ったのか。

なぜカメラを切ったのか。

そして、なぜ蓮くんの名前の書類を隠していたのか。

校長は書類を読み進めた。

数秒後、その顔から怒りが消えた。

代わりに、深い困惑が浮かんだ。

「これは……特待生選考に関する内部資料ですね」

蓮くんの肩が震えた。

「僕の……?」

校長は頷いた。

「そうだ」

坂本先生がすぐに口を開いた。

「校長先生、それは誤解です。私はただ、学校のために確認していただけで――」

「確認?」

校長の声は冷たかった。

「あなたはこの資料を持ち出す権限がありません」

坂本先生の顔が硬くなる。

私はその瞬間、初めて気づいた。

先生が怒っていた理由は、盗難事件ではなかった。

何か別のものを隠そうとしていたのだ。

蓮くんが小さな声で言った。

「僕……何か悪いことをしたんですか?」

その言葉が胸に刺さった。

10歳の男の子が、自分が傷つけられた側なのに、自分を責めていた。

校長はすぐに首を横に振った。

「違う。君は何も悪くない」

「でも……」

蓮くんは唇を噛んだ。

「先生は、僕がここにいる価値がないって……」

教室が静まり返った。

坂本先生の顔色が変わった。

校長はゆっくり立ち上がった。

「坂本先生。職員室で話をしましょう」

「待ってください」

坂本先生は突然、私を見た。

「この子の証言だけで判断するんですか?」

私は驚いた。

「私は嘘を言っていません」

「子どもは思い込みで間違えることがあります」

坂本先生は冷たく笑った。

「それに、防犯カメラが戻ったのも、本当に偶然かもしれません」

その瞬間。

私は胸が苦しくなった。

私がスイッチを入れたことを言うべきなのか。

言ったら、先生はどうするのか。

でも、もう隠したくなかった。

私は手を上げた。

「校長先生」

全員が私を見る。

「カメラを戻したのは……私です」

教室が凍った。

蓮くんが驚いた顔で私を見る。

「え……?」

私は震えながら続けた。

「先生がカメラを切ったあと、何か怖いことが起きると思いました。だから……戻しました」

校長はしばらく黙っていた。

そして静かに言った。

「ありがとう」

その一言で、少しだけ涙が出そうになった。

でも、坂本先生は違った。

彼女は私を睨んでいた。

「あなた……」

その声には怒りが混ざっていた。

「余計なことをしたわね」

警備員がすぐに彼女の前へ立った。

「もう発言は控えてください」

坂本先生は何も言わなかった。

しかし、その目にはまだ何かが残っていた。

まるで、まだ終わっていないと言っているようだった。

その日の放課後。

私は一人で教室に残っていた。

机の上には、あの日使ったノート。

窓の外は暗くなり始めていた。

すると。

誰もいないと思っていた教室の後ろから、声がした。

「……君だったんだね」

振り向くと、そこには蓮くんが立っていた。

「カメラを戻したの」

私は頷いた。

「怖かったけど……」

蓮くんは俯いた。

「ありがとう」

小さな声だった。

でも、その言葉には本当の感謝が込められていた。

その時。

蓮くんが持っていた封筒から、一枚の写真が床に落ちた。

私は拾おうとした。

そして写真を見た瞬間、息が止まった。

そこには、幼い蓮くんと、知らない女性が写っていた。

裏側には、短い文字が書かれていた。

「この子を学校から追い出せ」

そして、その下にあった名前を見て。

私は背筋が凍った。

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そこには、坂本先生ではない。

別の人物の名前が書かれていた。

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