Chapter 6: 裏切りの協力者
写真を握る手が震えた。
そこに写っていた人物。
田村さん。
妻が生前から付き合いのあった弁護士だった。
私の家族の事情を最もよく知る人物。
妻の遺言整理。
財産管理。
そして、私が倒れた時の手続き。
全て彼に相談していた。
「なぜ……」
声が漏れた。
警察官は慎重に話した。
「田村さんは、翔太さんと数回接触しています」
「証拠は?」
「現在確認中です」
里奈は写真を見つめていた。
「私……この人に会ったことがあります」
私は振り返る。
「いつ?」
「翔太と付き合い始めた頃」
「何を話した?」
里奈は思い出そうとした。
「お父さんのことを聞かれた」
「何を?」
「健康状態とか、財産のこととか……」
私は椅子に座った。
力が抜けた。
自分の周りにいた人間が、ずっと私を見ていた。
家族としてではなく。
金として。
「お父さん」
里奈の声がした。
「私、本当に最低だった」
私は何も言わなかった。
「でも……全部取り戻す」
彼女の目には、初めて覚悟があった。
「翔太を止める」
警察官が頷く。
「そのためには協力が必要です」
その日の午後。
私は田村さんに電話をした。
「久しぶりですね、〇〇さん」
いつも通りの声。
優しい声。
それが今は気味が悪かった。
「少し聞きたいことがあります」
「何でしょう」
「翔太さんと会っていますね」
沈黙。
ほんの一瞬。
だが、私は聞き逃さなかった。
「何のことですか?」
「知らないふりをするんですか」
田村さんはため息をついた。
「〇〇さん、誤解です」
「ではなぜ、私の手術延期の連絡がされたんですか」
電話の向こうが静かになる。
「……」
「答えてください」
しばらくして。
田村さんは小さな声で言った。
「あなたには、知らない方がいいことがあります」
背筋が冷えた。
「何だ」
「あなたの妻が亡くなる前に残した書類です」
私は息を止めた。
「妻が?」
「はい」
「何を知っている」
田村さんは答えなかった。
代わりに言った。
「あなたの奥さんは、里奈さんを完全には信用していませんでした」
その言葉が胸に刺さった。
「嘘だ」
「本当です」
私は怒りを感じた。
妻を利用するな。
「証拠があります」
田村さんは続けた。
「あなたの奥さんが残した秘密の手紙」
電話が切れた。
私はしばらく動けなかった。
妻。
里奈。
翔太。
全てが繋がっている。
その夜。
里奈が私の部屋に入ってきた。
手には古い箱。
「お父さん」
「何だ」
「これ……お母さんの部屋から見つけた」
箱を開ける。
中には一通の封筒。
表には私の名前。
そして裏には、妻の筆跡。
震える手で封を開ける。
中の最初の一文を読んだ瞬間。
私は息を失った。
『あなたへ。もしこの手紙を読む日が来たなら、私はもうそばにいません』
そして次の行。
『里奈が誰かに利用されていることに気づいていました』
私は顔を上げた。
里奈も泣いていた。
妻は全て知っていた。
そして最後の一文。
『でも、本当に恐ろしいのは翔太ではありません』
私は紙を握りしめた。
『あなたの一番近くにいる人物です』
その瞬間。
家の外で車のドアが閉まる音がした。
窓を見る。
暗闇の中に立っていた人物。
田村さんだった。
そして彼は、私の家を見上げながら電話をしていた。
「はい、計画は予定通り進んでいます」
私は凍りついた。
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田村さんの次の言葉が聞こえた。
「ただし……娘さんが父親側についたのが予想外でした」