Chapter 7: 父が隠していた真実
「お父さん……?」
画面の中に映った父の姿を見た瞬間、全身の血が凍った。
いつも誰よりも強く、何が起きても動じない父。
その父が、椅子に縛られている。
口元には傷。
でも、目だけはまだ諦めていなかった。
「美咲!」
画面越しに父の声が響く。
「逃げろ!」
その瞬間、叔父の手がスマートフォンを奪った。
「相変わらずだな、誠一は」
隆司はため息をついた。
「最後まで、自分より他人を心配する」
私は怒りで震えた。
「お父さんに何をしたの?」
「まだ何もしていない」
叔父は笑った。
「だが、君の選択次第だ」
隣にいた蓮が前に出る。
「お前……一体何なんだ」
叔父は彼を見る。
「ああ、神谷家の坊ちゃんか」
「俺を利用したのか?」
「利用?」
叔父は首を傾げた。
「君は自分の欲で動いただけだろう」
蓮の顔が歪む。
「俺にホテルの秘密を探らせたのはお前だろ」
沈黙。
叔父は否定しなかった。
私はその反応で確信した。
「全部あなたが仕組んだの?」
叔父はゆっくり笑った。
「全部ではない」
「何が違うの?」
「君がここまで成長したことだけは、私の計算外だった」
胸が痛んだ。
「私を……ずっと見ていたの?」
「当然だ」
叔父は古い椅子に腰を下ろした。
「君は、このホテルの最後の鍵だからな」
「鍵?」
叔父は日記を見る。
「君の母親は愚かだった」
その言葉を聞いた瞬間、怒りが込み上げた。
「母を侮辱しないで」
「事実だ」
叔父の声は冷たい。
「春香は、人を信じすぎた」
私は日記を強く握った。
「あなたが母を殺したの?」
一瞬。
叔父の表情が止まった。
その僅かな変化を、蓮も見ていた。
「今の反応……」
蓮が呟く。
「図星なのか?」
叔父は立ち上がった。
「若造が」
低い声。
「何も知らないくせに」
その瞬間、蓮は拳を握った。
しかし私は彼の腕を掴んだ。
「待って」
叔父は私を見る。
「賢くなったな」
「教えて」
私は震える声で言った。
「母に何があったの?」
長い沈黙。
そして叔父は答えた。
「君の母親は、ホテルの所有権を君に残そうとした」
「……」
「しかし、それを許せない人間がいた」
「誰?」
叔父は笑った。
「君の父親だ」
頭が真っ白になった。
「嘘」
「本当だ」
叔父は続けた。
「誠一は、君の母親の死後、すべてを管理した」
「それは……私を守るため」
「そう思っているのか?」
叔父は近づく。
「なら聞いてみるといい」
彼はスマートフォンを操作した。
別の映像が流れる。
そこには若い頃の父。
そして母。
二人が激しく言い争っている。
『美咲には知らせないで』
母の声。
『危険すぎる』
父の声。
私は息を止めた。
映像の最後。
母が言った。
『もし私に何かあったら、美咲を守って』
画面が暗くなる。
叔父が言う。
「君の父親は、すべてを知っていた」
私は混乱した。
「じゃあ……」
「そうだ」
叔父は囁く。
「君の父親には、まだ隠していることがある」
その時。
床に落ちていた日記が開いた。
最後のページ。
そこに、見覚えのない文章があった。
『誠一へ』
父への手紙。
私は読み始めた。
『もし美咲が真実を知る日が来たら、あなたが一番苦しむでしょう』
『でも、隠し続けることも愛ではありません』
手が震えた。
『あの日、私を襲ったのは――』
文字が途中で途切れていた。
最後の部分だけ破られている。
叔父が近づく。
「そこから先を知りたいか?」
私は顔を上げた。
「もちろん」
「なら、日記を渡せ」
私は黙った。
蓮が小声で言う。
「渡すな」
叔父が睨む。
「お前は黙っていろ」
その瞬間。
旧ホテル棟の外から大きな音がした。
警察車両のサイレン。
叔父の顔色が変わる。
「……まさか」
私はスマートフォンを取り出した。
画面には、父から送られていた一件のメッセージ。
『美咲、時間を稼げ』
その下に続く文章。
『警察に証拠を送った』
叔父の笑顔が消えた。
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そして初めて。
彼は焦った表情を見せた。