Amazed

Chapter 12: もう一人の家族

「本当の兄……?」

私は写真を握りしめた。

頭が追いつかなかった。

咲希に兄がいる。

そんな話は一度も聞いたことがない。

「嘘だ」

私は言った。

俊彦は首を振った。

「俺が嘘をついていると思うか?」

確かに。

彼は多くの嘘をついた。

しかし、この瞬間の表情は違った。

「説明しろ」

私は低い声で言った。

俊彦は静かに話し始めた。

「玲子さんには、結婚前に子どもがいた」

空気が止まった。

「でも、その子は……」

私は続きを待った。

「事故で亡くなったことになっていた」

「ことになっていた?」

俊彦は頷いた。

「実際には違う」

彼は写真を見る。

「生きている」

私は息を呑んだ。

その瞬間、私の中に疑問が生まれた。

なぜ玲子は言わなかった?

なぜ私に隠した?

帰宅後。

私は由香里に写真を見せた。

彼女は一瞬で顔色を変えた。

「知っているのか?」

私は聞いた。

由香里はゆっくり頷いた。

「……はい」

その答えに、私は怒りより悲しみを感じた。

「また隠していたのか」

「違う」

由香里は首を振った。

「これは、玲子さんが最後まで守ろうとした秘密だった」

「誰を?」

「その子を」

私は写真を見る。

「どこにいる?」

由香里は答えなかった。

「由香里」

「分からない」

彼女の目から涙が落ちる。

「でも、俊彦さんは知っている」

翌日。

私はもう一度俊彦に会った。

「その子は誰だ」

俊彦は黙っていた。

「答えろ」

「名前は直人」

初めて聞く名前。

「今どこにいる?」

俊彦は窓を見る。

「近くにいる」

「近く?」

彼は頷いた。

「お前の生活のすぐ近くに」

その瞬間。

嫌な予感がした。

「まさか……」

俊彦は答えなかった。

その日の夕方。

家に帰ると、玄関に一人の男性が立っていた。

年齢は二十代後半。

私を見ると、深く頭を下げた。

「初めまして」

私は警戒した。

「誰ですか」

男性は震える声で答えた。

「僕は……直人です」

時間が止まった。

「玲子さんの息子です」

私は何も言えなかった。

その後ろから咲希が出てきた。

「お父さん……」

彼女も驚いていた。

直人は涙を浮かべた。

「ずっと会いたかった」

私は震える声で聞いた。

「なぜ今まで姿を見せなかった?」

直人は答えた。

「母に言われていたからです」

「何を?」

彼は小さな封筒を差し出した。

「十八歳になった咲希さんに渡してほしいと」

私は封筒を見る。

また玲子の手紙。

しかし今回は。

宛名が違った。

『咲希へ』

私は開けるべきか迷った。

しかし、咲希は静かに頷いた。

「読んで」

私は封を開けた。

最初の一文。

それだけで涙が出た。

『咲希、ごめんなさい』

『あなたには、ずっと言えなかった秘密があります』

『あなたには、血の繋がった兄がいます』

咲希は息を止めた。

そして次の文章。

『でも、あなたたちは争うために生まれた家族ではありません』

『誰かを失った悲しみで、誰かを傷つけないでください』

私は読み進める。

最後の一文。

そこには、玲子が最後に残した願いがあった。

『もし咲希が夢を諦めそうになった時、必ず伝えてください』

『あなたの人生は、誰かに選ばせるものではありません』

その時。

スマートフォンが鳴った。

画面には大学からの通知。

件名を見た瞬間、私は息を止めた。

『奨学金不正申請に関する最終調査結果』

そして本文の最後。

『申請を行った人物が判明しました』

私は画面を開いた。

そこに書かれていた名前。

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それは――

私たちがまだ疑っていなかった人物だった。

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