Amazed

Chapter 14: 家族を壊した最後の嘘

「父に?」

私は信じられなかった。

「なぜそんなことをした」

由香里は泣きながら話し始めた。

「怖かったの」

「何が?」

「玲子さんの秘密を一人で抱えることが」

彼女は俯いた。

「直人さんの存在を知った時、私は混乱した」

直人は黙って聞いていた。

「玲子さんは、咲希と直人を守ろうとしていた」

由香里は言った。

「でも私は、自分が選ばれなかったように感じた」

私は言葉を失った。

「玲子さんは最後まで強かった」

由香里の声が震える。

「私は、そんな彼女を羨ましく思っていた」

彼女は顔を上げた。

「だから間違えた」

沈黙。

「俊彦さんは、その秘密を利用した」

私は理解した。

由香里は最初から悪人だったわけではない。

でも。

弱さにつけ込まれた結果、誰かの人生を壊した。

それでも許されるわけではなかった。

「咲希」

私は娘を見る。

彼女は静かに泣いていた。

「お母さん……」

咲希が由香里を見る。

「私、本当のお母さんのことを知らなかった」

由香里の肩が震える。

「でも」

咲希は続けた。

「あなたが私を愛してくれた時間まで、全部嘘だったとは思わない」

その言葉に、由香里は泣き崩れた。

「咲希……」

「でも」

咲希は首を振る。

「私の未来を奪ったことは、許せない」

由香里は何も言えなかった。

数日後。

大学の正式な調査結果が出た。

奨学金変更申請。

偽造メール。

辞退届。

すべての作成に関わった人物。

それは。

由香里と俊彦。

しかし、最後に明らかになった事実があった。

主導者。

別の人物。

私はその報告書を見て、手が震えた。

「そんな……」

そこには。

私の名前があった。

「俺?」

黒田さんは首を振った。

「違います」

「ではなぜ?」

「過去にあなたのアカウントへ不正アクセスした人物がいます」

「誰ですか?」

黒田さんは答えた。

「あなたの元秘書です」

私は思い出した。

数年前、会社の書類管理を任せていた人物。

彼は突然辞めた。

「なぜそんなことを?」

黒田さんは資料を差し出した。

「俊彦さんから依頼を受けていたようです」

私は唖然とした。

しかし、俊彦だけではなかった。

彼の周りには、長い間積み重ねた計画があった。

その夜。

私は俊彦に会った。

「終わりだ」

私が言うと、彼は笑った。

「そう思うか?」

「何?」

俊彦は一枚の紙を出した。

「まだ最後の問題が残っている」

それは、父の本当の遺言書だった。

しかし、以前見たものとは違った。

最後のページ。

そこには。

『咲希が成人した時、本人に選択させる』

と書かれていた。

「選択?」

俊彦は言った。

「財産でもない」

「家でもない」

彼は私を見る。

「家族そのものだ」

私は黙った。

「父は最後に、こう書いた」

俊彦は読み上げた。

『家族とは血ではなく、選び続けることだ』

その言葉に、俊彦は初めて涙を流した。

「俺は……選ばれたかった」

私は何も言えなかった。

翌日。

咲希は大学へ向かった。

新しい人生の始まり。

しかし玄関を出る前。

彼女は立ち止まった。

「お父さん」

「ん?」

「私、もう過去を怖がらない」

私は微笑んだ。

「そうか」

「でも」

彼女は続けた。

「最後に一つだけ知りたい」

「何を?」

咲希は古い写真を持っていた。

玲子と直人と、自分。

「お母さんが最後に残した、本当の願い」

私は写真を見る。

May you like

その裏には、まだ読んでいない小さな文字があった。

『最後に伝えたいことがあります』

Related Stories

Other posts