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Chapter 5: 父親という仮面

調停室に映し出された証拠写真。

そこに写っていたのは、正樹と一人の女性だった。

ただの知人ではない。

ただの取引先でもない。

二人は長年、別の生活を送っていた。

私は写真を見ながら、過去の記憶を掘り返していた。

「仕事が忙しい」

「会社の付き合いだ」

「家族のために頑張っている」

何度聞いたか分からない言葉。

私は、その全てを信じていた。

正樹は腕を組んだ。

「これは離婚とは関係ありません」

「夫婦関係はすでに破綻しています」

彼はいつものように、自分が正しいように話した。

でも、今回は違った。

調停員は冷静だった。

「正樹さん」

「問題は不貞行為だけではありません」

「共有財産の移動、子供たちを利用した資産隠し、そして虚偽説明です」

正樹は黙った。

私は横にいる咲希を見た。

彼女はずっと俯いていた。

14歳の少女には、重すぎる現実だった。

帰宅後。

咲希はリビングで突然言った。

「お母さん」

「私、お兄ちゃんたちが嫌いになりそう」

私は驚いた。

「咲希」

彼女は涙を流していた。

「だって、お兄ちゃんたちはお母さんを傷つけた」

私は隣に座った。

「傷ついたね」

「うん」

「でも、憎しみだけで生きると、あなたまで苦しくなる」

咲希は黙った。

「人は間違えることがある」

「でも、間違いを認める勇気があるかどうかが大事なの」

その夜。

玄関のチャイムが鳴った。

開けると、そこにいたのは拓海だった。

「母さん」

彼は目を赤くしていた。

「少し話したい」

私は迷った。

でも、彼を中に入れた。

拓海は座るなり頭を下げた。

「ごめん」

その一言。

でも、私はすぐには返事をしなかった。

「何に対して?」

拓海は震えた。

「全部」

「父さんを信じたこと」

「母さんを悪者だと思ったこと」

「お金のことを手伝ったこと」

彼はポケットからUSBメモリを取り出した。

「これ」

私は警戒した。

「何?」

「父さんの会社のデータ」

「俺、最近気づいた」

「父さんは俺たちの名前を使っただけだった」

拓海の声が震える。

「会社のお金を移すために、俺たちを盾にしたんだ」

私はUSBを見つめた。

「なぜ今になって?」

拓海は涙をこらえた。

「父さんが言ったんだ」

「もし問題になったら、全部俺たちの責任にするって」

その瞬間。

私は理解した。

正樹は息子たちすら守るつもりがなかった。

彼にとって家族は、ただの道具だった。

翌日。

田中さんにUSBを渡した。

数時間後。

彼から連絡が来た。

「由美さん」

「大変なことが分かりました」

「このデータの中に、正樹さんが隠していた契約書があります」

「そして、その契約書には……」

私は息を止めた。

「誰の名前がありますか?」

田中さんの声が低くなる。

「咲希さんです」

全身が冷たくなった。

「……咲希?」

「はい」

「正樹さんは、娘さんを守るためではなく……」

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田中さんが続けた。

「娘さんの名前まで利用していました」

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