Chapter 11: 祖母の隠し部屋
翌朝。
私は一人ではなかった。
父。
高橋さん。
神谷さん。
そして意外にも。
結衣が一緒に来た。
「どうして?」
私が聞くと、結衣は俯いた。
「私も責任があるから」
私は何も言わなかった。
彼女は私のお金を使ったわけではない。
でも。
知らないまま、その恩恵を受けていた。
その罪悪感があるのだと思った。
祖母の家は、昔のままだった。
玄関の木の匂い。
古い時計の音。
全部が懐かしかった。
私は小さい頃、ここで夏休みを過ごした。
祖母はいつも言っていた。
「秘密は隠すためじゃなく、守るためにあるのよ」
その意味を。
今になって理解し始めていた。
高橋さんは家の中を確認した。
「黒田さんが送った場所は?」
私は写真を見る。
赤い丸。
祖母の書斎。
そこには古い本棚があった。
父が近づく。
「ここは昔から変わっていない」
私は棚の本を見る。
一冊だけ。
少し位置がずれていた。
「これ……」
引き抜く。
すると。
奥に小さな鍵穴があった。
父が驚く。
「こんなもの……」
鍵は。
祖母の指輪ケースの中に入っていた。
高橋さんが言った。
「おそらく、あなたのお祖母様は誰かが見つけることを想定していました」
鍵を回す。
カチッ。
壁の一部が開いた。
そこには小さな部屋。
中には箱が一つ。
私は息を止めた。
祖母の隠し部屋。
箱の中には。
大量の書類。
写真。
録音機。
そして。
一通の手紙。
『咲希へ』
私は震える手で開いた。
『もしあなたがこの箱を開けているなら、私はもうあなたの隣にはいないでしょう』
涙が落ちる。
『でも、あなたがここまで来たということは、自分の力で真実を探したということです』
その時。
背後から声がした。
「感動的だな」
全員が振り返った。
黒田真人。
いつの間にか。
入口に立っていた。
父が前に出る。
「どうやって入った」
黒田は笑った。
「鍵を持っていたから」
私は驚いた。
「鍵?」
黒田は私を見る。
「君の祖母は、私を完全には信用していなかった」
「当然でしょう」
私が言うと、黒田は笑った。
「強いね」
彼はゆっくり部屋に入る。
「君のお母さんに似ている」
父の目が鋭くなる。
「近づくな」
黒田は止まった。
「君には分からないだろう」
「何が?」
「私はただ、奪ったんじゃない」
黒田は箱を見る。
「返してもらおうとしているだけだ」
高橋さんが言った。
「あなたが盗んだ資金について説明してください」
黒田は笑う。
「証拠は?」
その瞬間。
神谷さんが前に出た。
「ある」
黒田の顔から笑みが消えた。
「お前……」
「あなたが忘れたものを、私は全部持っている」
黒田は初めて焦った。
私は箱の中を見る。
そこには。
古いUSBメモリ。
そして。
祖母の録音メモ。
高橋さんが手に取った。
「これが証拠ですね」
黒田が叫ぶ。
「触るな!」
その反応で。
全員が理解した。
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これこそ。
黒田が恐れていたものだった。