Amazed

Chapter 14: すべてを取り戻す日

数週間後。

黒田真人の事件は大きく報道された。

過去の投資詐欺。

不正送金。

複数の被害者。

次々と証拠が出てきた。

そして。

悦子が関わった資金流用についても調査が始まった。

私はニュースを見ることは少なかった。

もう、過去に縛られたくなかったから。

私にはやることがあった。

大学の手続き。

授業料。

新しい生活。

そして。

祖母から残されたものを整理すること。

高橋さんの事務所で。

私は大量の書類を見ていた。

「本当に私のものなんですか?」

高橋さんは微笑んだ。

「はい」

「でも、私は何もしていない」

「違います」

彼女は言った。

「あなたは何年も、守られてきたんです」

机の上には株式証明書。

信託書類。

祖母からの手紙。

私は知らなかった。

祖母が小さな貯金だけではなく。

私の未来そのものを準備していたことを。

その帰り。

父と二人で食事をした。

昔よく行った小さな店。

父は箸を持ちながら笑った。

「覚えてるか?」

「何を?」

「小さい頃、お前がこの店のプリンを毎回頼んでいた」

私は笑った。

「覚えてない」

「俺は覚えてる」

父は優しく言った。

「お前は泣いた後でも、プリンを見ると笑った」

胸が温かくなった。

「お父さん」

「ん?」

「ありがとう」

父は少し驚いた顔をした。

「何が?」

「私を育ててくれて」

父は目を逸らした。

「当たり前だ」

「でも」

「咲希」

父は言った。

「俺がお前の父親だった時間は、誰にも奪えない」

私は頷いた。

その言葉は。

何よりも大切だった。

数日後。

結衣から連絡が来た。

会いたいと言われた。

最初は迷った。

でも。

会うことにした。

カフェで向かい合う。

以前のような姉妹の距離ではなかった。

でも。

敵でもなかった。

「咲希」

結衣が言った。

「ごめん」

私は黙って聞いた。

「私、何も知らなかった」

「うん」

「でも、知らなかったって言葉で逃げたくない」

私は彼女を見る。

結衣は泣いていた。

「車、売ることにした」

「……」

「お金は全部返す」

私は少し驚いた。

「赤ちゃんは?」

「大丈夫」

結衣は笑った。

「私も働く」

その言葉を聞いて。

少しだけ心が軽くなった。

人は間違える。

でも。

その後どうするかで変わる。

帰宅すると。

父が封筒を渡してきた。

「何?」

「祖母さんからだ」

私は驚いた。

「まだあるの?」

父は笑った。

「最後の一通だ」

私は開いた。

『咲希へ』

また祖母の文字。

『あなたは、たくさんの秘密を知りました』

『きっと傷ついたでしょう』

涙が落ちる。

『でも覚えていてください』

『真実は人を壊すものではありません』

『偽物の関係を壊し、本当に大切なものを残すものです』

私は手紙を抱きしめた。

最後の一文。

そこには。

『あなたが選ぶ家族こそ、本当の家族です』

と書かれていた。

その夜。

父の部屋から声が聞こえた。

電話だった。

「はい」

「……分かりました」

私は気になって近づいた。

父の顔が険しい。

電話を切る。

「何かあった?」

父は少し迷った。

「黒田が最後に言っていたこと」

「うん」

「まだ終わっていない」

私は緊張した。

「どういう意味?」

父は一枚の紙を見せた。

そこには。

新しい名前。

そして。

私の祖母の署名。

「これは?」

父は言った。

「祖母さんが残した、最後の契約書だ」

「でも」

私は紙を見る。

そこには一つの条件。

『もし咲希が真実を知った時、最後に確認すべき人物がいる』

私は眉をひそめた。

「確認すべき人物?」

父は頷いた。

「一人いる」

「誰?」

父は静かに答えた。

「お前の母さんが、最後まで信用していた人」

私は息を止めた。

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まだ。

終わっていなかった。

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