Amazed

Chapter 11: 父親を試した手紙

封筒は慎重に開封された。

古い紙。

少し黄ばんだ文字。

でも、そこに書かれている名前だけは鮮明だった。

「あなたへ」

沙織から私へ。

私は深く息を吸った。

莉子は隣で黙っていた。

「読んでもいいか?」

彼女は小さくうなずいた。

私は手紙を開いた。

「あなたへ」

「もしこの手紙が届いているなら、私はもう莉子の隣にいないでしょう」

胸が痛んだ。

「でも、お願いがあります」

「莉子を守ってください」

そこまでは予想していた。

しかし、次の文章で手が止まった。

「そして、あなた自身も守ってください」

私は眉をひそめた。

「あなたは優しすぎます」

「人を信じすぎて、自分が傷ついていることに気づかない」

莉子が静かに涙を流した。

「美智子さんは、あなたを利用しようとしています」

私は息を止めた。

「でも、彼女だけではありません」

その一文。

部屋の空気が変わった。

「あなたの近くにいる人間の中に、真実を隠している人がいます」

私は亮介を見る。

彼は顔を伏せた。

「でも、私はあなたを責めません」

沙織の文字は続く。

「人は間違えるから」

「大切なのは、その後どうするかです」

最後のページ。

そこには一つの住所が書かれていた。

「ここに行ってください」

「莉子が生まれた時の記録があります」

私は驚いた。

「生まれた時の記録?」

由香さんが言った。

「沙織は何かを残していたのね」

翌日。

私たちはその住所へ向かった。

古い診療所だった。

そこで待っていたのは、当時の医師だった。

「あなたが来ると思っていました」

医師は言った。

「沙織さんは、本当にあなたを信じていました」

私は尋ねた。

「莉子について何か隠されていることがありますか?」

医師は静かに頷いた。

「あります」

莉子が緊張する。

医師は古い記録を取り出した。

「出生記録の一部が改ざんされていました」

「誰が?」

医師は答えなかった。

しかし、視線が向いた先は分かっていた。

「美智子さんです」

莉子は目を閉じた。

私は怒りを抑えた。

「何のために?」

医師は言った。

「莉子さんの出生に関する情報を隠すためです」

「本当の情報は?」

医師は封筒を渡した。

中にはDNA検査の結果。

そしてもう一枚の書類。

私は震える手で開いた。

そこには――

莉子の父親。

私の名前。

私は息を止めた。

亮介ではなかった。

私だった。

莉子は私の娘だった。

全てが繋がった。

美智子は莉子の存在を消したかった。

財産のためだけではない。

彼女は、私と莉子の絆を壊したかった。

「パパ……」

莉子の声。

私は彼女を抱きしめた。

「聞いて」

「何?」

「何があっても、お前は俺の娘だ」

莉子は泣いた。

「本当に?」

「本当に」

その夜、私は亮介に会った。

「なぜ黙っていた」

彼は苦しそうに笑った。

「沙織が望んだ」

「でも俺は疑った」

亮介は頷いた。

「だから美智子につけ込まれた」

「何をした?」

彼は沈黙した。

そして言った。

「俺は一度だけ、美智子に情報を渡した」

私は息を飲んだ。

「何の情報だ」

亮介は答えた。

「お前の家の財産状況」

怒りが込み上げた。

しかし、彼の顔を見ると分かった。

彼もまた、後悔していた。

その時、私のスマホが鳴った。

弁護士だった。

「大変です」

「何が?」

「美智子さんが保釈されました」

私は眉をひそめた。

「なぜ?」

弁護士の声が震えた。

「彼女が新しい証拠を提出しました」

「証拠?」

「あなたが莉子さんを虐待していたという内容です」

私は凍りついた。

「何?」

弁護士は続けた。

「そして、その証拠として提出された動画があります」

私は画面を見る。

送られてきた映像。

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そこには――

私が莉子に怒鳴っているように編集された映像が映っていた。

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