Amazed

Chapter 13: 最後に残された嘘

写真の裏に書かれた名前を見た瞬間、私は指先の感覚を失った。

そこに書かれていた名前。

それは――

由香。

莉子の母親、沙織の妹。

私が信じ始めていた人物だった。

「嘘だろ……」

私は何度も写真を見返した。

古い写真。

幼い莉子。

沙織。

そして若い由香。

一見すると、ただの家族写真だった。

しかし、裏側には赤いペンで書かれた文字。

「彼女も真実を隠している」

私はその夜、眠れなかった。

頭の中で全ての出来事が繋がったり、崩れたりしていた。

美智子。

亮介。

由香。

誰を信じればいいのか分からなくなっていた。

翌朝、私は由香さんに写真を見せた。

彼女の顔から血の気が引いた。

その反応を見て、私は確信した。

「知っているんだな」

由香さんは黙った。

「答えてください」

長い沈黙の後、彼女は椅子に座った。

「……いつか話さなければいけないと思っていた」

莉子が不安そうに私を見る。

「パパ」

私は彼女の肩に手を置いた。

「大丈夫だ」

でも、私自身も大丈夫ではなかった。

由香さんはゆっくり話し始めた。

「沙織が亡くなる前、私たちは喧嘩をしました」

私は驚いた。

「喧嘩?」

「ええ」

彼女は目を伏せた。

「沙織は、莉子をあなたに託すことを決めていた」

「それは……」

「でも私は反対した」

莉子が小さく息を吸った。

由香さんは続けた。

「私は思ったの。あなたは仕事ばかりで、莉子を一人にしてしまうって」

その言葉は痛かった。

確かに、私は仕事を理由に家を空けることが多かった。

でも――

「だから美智子に協力したのか?」

由香さんは首を振った。

「違う」

「じゃあ何をした?」

彼女は涙を浮かべた。

「沙織の手紙を一度だけ隠した」

部屋が静まり返った。

「なぜ?」

「怖かったの」

由香さんは言った。

「沙織が亡くなった後、あなたが壊れてしまうと思った」

「だから俺から真実を奪ったのか?」

「違う……」

彼女の声が震えた。

「私は時間が必要だと思った」

私は怒りを抑えた。

「でも、その時間の間に、美智子が動いた」

由香さんは頷いた。

「そう」

「あなたが隠した手紙を、美智子が見つけた」

その瞬間、全てが繋がった。

美智子は偶然ではなく、情報を得て動いていた。

しかし、まだ一つ分からないことがあった。

「この写真を送ったのは誰だ?」

誰も答えなかった。

その日の午後、亮介から電話が来た。

「会いたい」

私は迷った。

でも、もう逃げるわけにはいかなかった。

指定された場所へ行くと、亮介は疲れた顔をしていた。

「写真を見たか?」

私は驚いた。

「知っているのか?」

亮介は頷いた。

「俺が送った」

怒りが込み上げた。

「なぜ?」

彼は静かに言った。

「お前が真実を知る時が来たからだ」

「回りくどいことをするな」

亮介は一枚の書類を出した。

「美智子が最初に狙っていたもの」

それは財産ではなかった。

「何だこれは?」

「莉子の母親が残した会社」

私は驚いた。

沙織が小さな会社を持っていたことは知っていた。

でも、そんな価値があるものだとは思っていなかった。

亮介は言った。

「美智子は金だけが目的じゃなかった」

「じゃあ?」

「沙織の人生そのものを奪いたかった」

その言葉に、私は背筋が冷えた。

「どういう意味だ」

亮介は答えた。

「美智子は昔から沙織に嫉妬していた」

「でも、それだけで?」

亮介は首を振った。

「違う」

彼は最後の書類を出した。

そこには美智子の署名。

そして――

沙織の会社の株式譲渡契約。

「これは……」

「沙織が亡くなる直前、無理やり署名させようとした証拠だ」

私は拳を握った。

その夜、警察から連絡が来た。

美智子について、新しい証拠が見つかった。

そして、その証拠には彼女が一人ではなかったことが示されていた。

「協力者がいます」

警察官は言った。

「誰ですか?」

少しの沈黙。

そして答え。

May you like

「美智子さんの子供です」

私は凍りついた。

Related Stories

Other posts