Amazed

Chapter 3: 娘が隠していた涙

私は何度も写真を見返した。

莉子。

見知らぬ女性。

そして、その女性の手に握られている一枚の封筒。

「これは誰だ?」

私が聞くと、美智子は黙った。

その沈黙が、逆に怖かった。

「美智子」

私は低い声で呼んだ。

「知っているのか?」

彼女は椅子に座った。

「知っているわ」

「誰なんだ」

美智子は冷静だった。

「莉子の母親よ」

時間が止まったようだった。

莉子の母親。

つまり、私の元妻。

彼女は数年前に亡くなったはずだった。

「ありえない」

「そう思うでしょうね」

美智子は言った。

「でも、あなたは何も調べなかった」

その言葉が胸に刺さった。

確かに私は、過去から逃げていた。

莉子を守ることだけを考えて、深く考えないようにしていた。

しかし、それでも一つだけ分かっていた。

美智子が何かを隠している。

「莉子は知っているのか?」

「知らない」

「じゃあ、なぜ写真がある?」

美智子は答えなかった。

その夜、私は莉子の部屋へ向かった。

ドアの前で立ち止まった。

中から小さな声が聞こえた。

「ごめんなさい……」

私はゆっくりドアを開けた。

莉子は机の前で泣いていた。

「何を謝ってるんだ」

莉子は驚いて振り向いた。

「パパ……」

私は隣に座った。

「写真の女性は誰?」

莉子の顔色が変わった。

「……見たの?」

「教えてほしい」

しばらく沈黙が続いた。

そして莉子は小さな箱を取り出した。

「これ」

箱の中には古い手紙が入っていた。

「ママから」

私は息を飲んだ。

「でも、ママは……」

「うん」

莉子は涙を拭いた。

「亡くなる前に書いたもの」

「なぜ私に見せなかった?」

莉子は震える声で言った。

「美智子さんに言われたから」

「何を?」

「パパは悲しむからって」

私は目を閉じた。

まただった。

また美智子の名前が出てきた。

莉子は続けた。

「でも、本当は違った」

「何が?」

「美智子さんは……ママが残したものを全部捨てようとしてた」

私は立ち上がった。

「いつからだ」

「ずっと前」

莉子の声が震えた。

「私がママの写真を見ると怒った」

「どうして言わなかった」

莉子は涙を流した。

「パパが幸せそうだったから」

その言葉で、私は動けなくなった。

12歳の子供が、自分の苦しみより父親の幸せを優先していた。

その夜、私は決めた。

もう見ないふりはしない。

翌日、私は美智子の部屋に入った。

「話がある」

美智子は振り返った。

「何?」

私は机の上に動画を置いた。

「全部見た」

彼女の顔から血の気が引いた。

「……そう」

「なぜ莉子を傷つけた?」

美智子はしばらく黙った。

そして言った。

「あなたは分かってない」

「何を?」

「私は家族を守ろうとしただけ」

「莉子を追い出すことが?」

美智子は目を細めた。

「莉子がいる限り、あなたは過去から離れられない」

その瞬間、玄関の方から音がした。

誰かが家に入ってきた。

美智子は驚いて振り向いた。

「どうして……」

私も振り向いた。

そこに立っていたのは、一人の女性だった。

手には古い写真アルバム。

そして、震える声で言った。

「やっと会えたね、莉子」

私は息を止めた。

その女性は、美智子が存在を隠していたはずの人物だった。

莉子の亡くなった母親の――

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妹だった。

そして彼女が持っていたアルバムの最後のページには、私が知らなかった一枚の写真が貼られていた。

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