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Chapter 7: 母の死の日に消えた証拠

警察官の言葉を聞いた瞬間、部屋の空気が変わった。

「数年前の事件についても、再調査が始まっています」

その一言が、私の頭の中で何度も響いた。

莉子の母親、沙織が亡くなった日。

私はずっと、あの日のことを受け入れようとしていた。

突然の病気。

短すぎる別れ。

残された小さな娘。

それが私が知っていた全てだった。

しかし、今になって思えば、私は何も知らなかった。

美智子は青ざめた顔で警察官を見る。

「何の話ですか?」

警察官は淡々と答えた。

「沙織さんの死亡前後に関する証拠の再確認です」

「証拠?」

美智子の声が少し高くなった。

「そんなもの、もう何年も前の話でしょう」

「だからこそ確認しています」

警察官は封筒から書類を取り出した。

「当時、紛失したとされていた記録が見つかりました」

私は息を止めた。

「紛失?」

警察官は私を見る。

「はい。沙織さんが亡くなる直前に残したデータです」

美智子の表情が固まった。

その反応を見た瞬間、私は確信した。

彼女は何かを知っている。

「美智子」

私は静かに呼んだ。

「お前は何を隠している?」

彼女は私を睨んだ。

「あなたまで私を疑うの?」

「疑う理由は十分ある」

その瞬間、美智子は声を荒げた。

「全部あの子のためだったのよ!」

莉子が玄関の方から戻ってきていた。

いつから聞いていたのか分からない。

「私のため?」

莉子の声が震えた。

美智子は一瞬黙った。

「莉子……」

「私のためなら、どうして嘘をついたの?」

莉子の目から涙が落ちた。

「どうしてママのことを忘れろって言ったの?」

美智子は答えられなかった。

警察官は静かに言った。

「続きは正式な場で確認しましょう」

その日の夜。

私は由香さんと一緒に、沙織が残した資料を確認した。

古いUSB。

手紙。

写真。

そして一つの音声ファイル。

再生ボタンを押す。

最初は雑音だけだった。

数秒後。

聞き覚えのある声が流れた。

沙織だった。

「もし、この音声を誰かが聞いているなら……」

私は思わず画面を握った。

「莉子を守ってください」

小さな声。

でも、確かな母親の声だった。

「私は間違っていた」

沙織は続けた。

「人を信じすぎた」

由香さんが息を飲む。

「美智子さん?」

音声の中で、沙織は名前を言った。

「美智子は、私の友人だった」

私は驚いた。

友人?

「最初は莉子を心配してくれていると思っていた」

沙織の声が震える。

「でも、彼女は私の夫……あなたのお金や財産について質問するようになった」

私は目を閉じた。

「そして、私が気づいた時には遅かった」

音声が少し途切れる。

「もし私に何かあったら……」

そこで一瞬沈黙。

「莉子を彼女から離してください」

部屋の中に重い沈黙が落ちた。

莉子は泣いていた。

「ママ……」

私は彼女の肩を抱いた。

その時、由香さんが別の書類を見つけた。

「待って」

彼女の声が変わった。

「これ……」

紙には、沙織の手書きのメモがあった。

「美智子は一人ではない」

私は顔を上げた。

「どういう意味?」

由香さんは震える指で続きを読んだ。

「彼女を手伝っている人物がいる」

そして、その下に名前が書かれていた。

私はその名前を見て、凍りついた。

美智子が送金していた会社の代表者。

写真に写っていた男性。

そして――

私の親友だった男。

「亮介……」

私は呟いた。

大学時代からの親友。

結婚式にも来た。

莉子が生まれた時も祝ってくれた。

なぜ。

なぜ彼が。

その時、スマホにメッセージが届いた。

送信者。

亮介。

内容は一行だけだった。

「もう知ったんだな」

私は画面を見つめた。

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続けて二通目が届く。

「でも、本当のことを知る覚悟はあるか?」

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