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Chapter 2: 消えた娘の居場所

画面の中で、美智子は周囲を確認していた。

まるで誰かに見られることを恐れているようだった。

私は映像を見ながら、言葉を失っていた。

「……これは、いつ撮ったんだ?」

葵は小さな声で答えた。

「パパが出張に行った次の日」

「どうして撮った?」

葵は目を伏せた。

「最初は……莉子ちゃんを助けたかっただけ」

その呼び方に、胸が痛んだ。

葵にとって莉子はただの姉ではなかった。

同じ家で暮らし、同じ父親を愛する大切な存在だった。

動画の中で、美智子は莉子のクローゼットを開けていた。

服を一枚ずつ取り出している。

「何をしてるんだ……」

私の声が震えた。

葵は唇を噛んだ。

「見て」

画面の中で美智子が電話をかけた。

「もしもし?はい、準備できます」

相手の声は聞こえない。

美智子は続けた。

「ええ。あの子には、あなたの家の方がいいと思うんです」

私の背中に冷たいものが走った。

「あの子って……」

葵は答えなかった。

必要な答えは、もう分かっていた。

莉子だ。

私の娘だった。

「葵」

私はスマホを握りしめた。

「他にも動画があるのか?」

葵は静かにうなずいた。

「ある」

「全部見せて」

「でも……」

葵の目に涙が浮かんだ。

「パパ、怒ったらダメ」

私は驚いた。

「どうして?」

「パパが怒ってママを責めたら……莉子ちゃんがもっと怖い思いをするかもしれないから」

8歳の子供が、そんなことを考えていた。

私は自分がどれだけ何も見ていなかったのか思い知らされた。

翌朝。

私はいつも通り朝食の席についた。

美智子は笑顔でコーヒーを置いた。

「昨日は疲れていたでしょう?」

「ああ」

私は彼女の顔を見た。

以前なら、そこに優しさを探していた。

今は違った。

その笑顔の裏側を見ようとしていた。

「莉子は?」

美智子は一瞬だけ動きを止めた。

「まだ寝てるんじゃない?」

「学校の時間だ」

「体調が悪いのかもしれないわ」

私は二階へ向かった。

莉子の部屋のドアをノックした。

「莉子」

しばらくして、小さな声が返ってきた。

「……パパ?」

ドアを開けると、莉子は机の前に座っていた。

目の下には薄い隈があった。

「大丈夫か?」

莉子は笑おうとした。

でも、うまく笑えなかった。

「大丈夫」

「本当に?」

「うん」

私はベッドの横に座った。

「パパに何か言いたいことがあるなら、言っていい」

莉子は黙った。

長い沈黙。

そして、震える声で言った。

「パパ」

「何?」

「私……悪い子なのかな」

その言葉で、胸が締め付けられた。

「どうしてそんなこと言うんだ」

莉子は下を向いた。

「美智子さんがいつも言うから」

「何て?」

「私がいると迷惑だって」

私は拳を握った。

「いつから?」

莉子は答えなかった。

その沈黙が、一番の答えだった。

その日の午後。

私は仕事部屋で、葵の動画をもう一度確認した。

一つの動画。

二つ目。

三つ目。

そして最後の動画。

そこには、決定的な会話が残っていた。

美智子が誰かと話している。

「主人は優しいから、きっと気づかない」

その言葉に、私の呼吸が止まった。

「莉子がいなくなれば、この家は本当の家族になれる」

私は椅子から立ち上がった。

その瞬間、背後から声がした。

「見つけたのね」

振り向くと、美智子がドアの前に立っていた。

彼女は笑っていなかった。

「葵が全部見せたの?」

私はスマホを握ったまま答えた。

「なぜ、莉子を追い出そうとした?」

美智子はため息をついた。

「あなたには理解できないわ」

「理解したいとは思っている」

「違う」

彼女はゆっくり近づいた。

「あなたは莉子の父親だから、何でも信じたいだけ」

「それは悪いことか?」

美智子は黙った。

そして小さく笑った。

「あなた、本当に何も知らないのね」

「何を?」

彼女は私の目を見た。

「莉子があなたに隠していること」

その瞬間、スマホが震えた。

知らない番号からメッセージが届いた。

一枚の写真。

そこには、莉子が学校の制服姿で、見知らぬ女性と一緒に立っていた。

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写真の下には短い文章があった。

「あなたの娘は、あなたが思っている子ではありません」

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