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Chapter 12: 父を演じる男

墓地に響く声。

「翔太」

僕の足が動かなかった。

父の声。

でも。

父じゃない。

頭では分かっている。

端末が証明した。

それでも。

心は騙されそうになる。

「父さん……」

僕が呟くと、村上は微笑んだ。

「そう呼んでくれていい」

その瞬間。

恵美さんが叫んだ。

「騙されないで!」

村上の笑顔が消えた。

「恵美」

「あなたにはもう負けない」

村上は小さく笑った。

「昔から変わらないな」

僕は聞いた。

「どうして父さんの声が出せるの?」

村上は答えた。

「君のお父さんをよく知っているからだ」

「違う」

僕は言った。

「知ってるだけじゃ、そんな声は出せない」

村上の目が細くなった。

「賢い」

「父さんなら、僕を騙そうとしない」

その言葉に、村上は少し黙った。

そして。

「君のお父さんは優しすぎた」

「だから負けた」

僕は睨んだ。

「父さんは負けてない」

村上は笑う。

「本当に?」

彼はスマートフォンを取り出した。

画面には映像。

父だった。

拘束されている父。

僕の息が止まる。

「父さん!」

走ろうとした。

でも高橋さんがいない。

恵美さんが腕を掴んだ。

「待って!」

「でも!」

映像の中の父は目を閉じていた。

生きている。

それだけで涙が出た。

「父さん……」

村上は言った。

「取引しよう」

「何を?」

「端末」

僕は握っている端末を見る。

「渡せば、お父さんを返す」

「嘘」

村上は笑った。

「なぜ?」

「父さんなら、そんな交換を望まない」

村上の表情が少し変わった。

図星だった。

その時。

恵美さんが鍵を僕に押し込んだ。

「翔太」

小声。

「逃げて」

「でも父さんが」

「あなたのお父さんは、それを望む」

村上が近づく。

「何を話している?」

僕は後ろへ下がった。

すると。

葵ちゃんが突然走り出した。

「葵!」

彼女は村上の前に立った。

「翔太くんをいじめないで」

村上は驚いた。

「君は……」

「私は怖くない」

小さな体。

震える声。

でも目は強かった。

「翔太くんのお父さんは、あなたみたいな人じゃない」

その瞬間。

村上の顔から余裕が消えた。

「黙れ」

彼が手を伸ばす。

僕は反射的に葵ちゃんを引いた。

その時。

遠くからサイレンの音が聞こえた。

村上が振り返る。

「……警察?」

恵美さんが言った。

「違う」

彼女はスマートフォンを見ていた。

「これは……」

画面には通知。

送信者。

父。

『翔太、今だ』

僕は驚いた。

父が操作している?

村上も気づいた。

「まさか」

その瞬間。

墓地の奥から声がした。

「村上」

全員が振り返った。

そこに立っていた人物。

僕は息を止めた。

痩せて。

傷だらけで。

でも。

間違いない。

「父さん……」

父がそこにいた。

僕の目から涙が溢れた。

「翔太」

父は笑った。

「大きくなったな」

僕は走り出した。

でも。

父が最初に言った言葉は、抱きしめる言葉ではなかった。

「翔太」

真剣な顔。

「まだ終わってない」

僕は止まった。

父は村上を見る。

「本当の裏切り者は、ここにはいない」

そして。

父は僕の後ろを見た。

「家の中にいる」

僕の心臓が凍った。

父が続ける。

「翔太」

「お前が一番信じている人間が――」

その瞬間。

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父の視線が葵ちゃんへ向いた。

「全ての始まりだった」

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